月は山影に隠れ、星はよりいっそう存在感をまして輝いていた。
そうここは槍ヶ岳の真横、鏡平山荘。
朝の3時は骨身に染みる寒さである。
朝御飯の焼きそばを食べ、
5時に小屋を出る。焼きそばにソースを絡ませるためお玉を回し続けていた秦さんは出発前から腕がつらそう。
ありがとうございました、お陰で美味しかったです。
歩いて20分たった頃、本日登るルートの全貌を把握。
・・・長い道してるだろ。
ウソみたいだろ。
登るんだぜ。・・・
(一同、遠い目をしながら来たるべき道の辛さに思いを馳せる、わりと元気)
月面よろしく山肌が見えている花見平を越え、
ホシガラスなる珍しい鳥を発見し
(野鳥の会:住友がいわく「ssレアレア」、ssは分かるがレアレアとは如何)、
7時双六小屋に到着。
小休止のみ行いすぐに出発する予定でいたが、
恒例のアディショナルタイム制度の導入である。
「田内さんが水を汲んだら」から
「秦さんがパウンドケーキを食べたら」に延長され
「田内さんがスポドリの粉を出したら」で終止符を打った。
みんなの体力も回復したことだし良いとしよう。
それでは気をとりなおして、出発!
「稜線で流しそうめんしたいですね~」おっと、体力の限界かな??
メルヘンなのかどうかも怪しいこの発言をしたのはわがチーム唯一の女性である小室ちゃん、無類の麺好きである。
(ご覧いただけるだろうか、ここでも麺をじっと見つめているのだ)
麺好きも高じるとこうなるのか、それとも3000mがそうさせたのかは謎に包まれたまま、ひたすら山を登る。
山崎の行動食はなぜかぼろぼろだった。
僕の持ってきたフルグラwith柿ピーは味が全く混ざりあっていないと話題だった。
8時9分樅沢岳、展望台からの展望よし!さらに進むと左手に赤岳が見えてくる。
名前の通り真っ赤な山、目に刺さるような赤だった。
歩いていくごとにだんだん硫黄の匂いが強くなっていく。
硫黄乗り越しに近づいているのを嗅覚でも感じる。
ここからは西鎌尾根と呼ばれる険しい山道。
来るべき岩々に覚悟をきめ、軍手を装備したその直後、山崎から「お前帰っていいよ」と突然の解雇宣言。
何をしたのか全く覚えてないが言われたことのみ覚えている。
僕のことだ、きっとなにかしたのだろう。
やれやれだぜ、聞こえなかったふりをして先頭を歩み続ける。
昨日に引き続き「いかに自分を騙すか」の闘いの始まりである。
「あと三時間とか要は2コマっしょ!余裕っしょ!」と余裕のない目をしながらいうのもSLの勤め。
鳴呼、なんと健気なSLの鏡(自称)よ。
地形図をみてひとしきりげんなりしたら槍ヶ岳目指して脇目も振らず、
いや脇目を振る余裕もなく歩くのみ。
西から吹く風は冷たく、足元にはにっくきアザミが挑発するかのような鮮やかさで咲き誇る。
葉のとげさえなければかわいいやつなのになぁ・・・。
おそらく自親会初となる「アザミ注意です」の注意喚起が行われた。
11時20分、千丈乗越。あと1コマ。坂まじつらい、余裕はない。
以下、メンバーのつぶやきをお聞きください。
しーちゃん「ほんと時間通りに着かなかったらめっちゃキレますからね」
和穂「あと四歩でつかないかなぁ」
田内さん・秦さん「高いところこわい」
そんなこんなを話していると、どこからか焦げた匂いが!これは!小屋が!近づいている!!
12時50分、小屋に到着。
肝心の槍ヶ岳は雲に隠れてしまっているが、ひとまずはテントを張ろう。
(疲労はすでにピーク)
今回のテン場は稜線の上、ひと足ふみはずせばすぐに下山できるような、
スリリングなテン場となっておりました。
歩きに歩き、登りに登った我々の身体は糖分を欲している。風にさらされ、汗で冷えた我々の身体は暖かいものを欲している。
(着くや否や寝始める和穂)
歩荷を出すにはベストなタイミング!各人が歩荷を取り出した。
江頭・・・おしるこ
しーちゃん・・・ままどーる
山崎・・・祈祷
住友・・・大納言羊羹
(住友としーちゃんの笑顔がまぶしい)
甘いものは人を幸せにするね。
後から到着した真聖さんとやっさんから「槍ヶ岳登ろうぜ~」とのお誘いを受けたが生憎そんな余裕は残っていない。
(初めて見るカメラに興味津々の山岳動物)
丁重にお断りし食事の準備を進める。
今回の長期登山は天候やその他もろもろの影響でエスケープを決断したため、最終日のカレーをここで作ることとする。
ウインナーが大量に投入されたカレーは家とは全く違うおいしさ!
明日の行程の会議をし力尽きた我々は、
カードゲームに興じることもなく泥のような眠りに落ちた。





























