2019 訓練登山 TEAM MARUKO
~肩には重荷、ゴールはどこに~
気づけば私は山にいた。
そこで自分に問うてみる。
なぜお前は歩くのか。
なぜお前は登るのか。
他の3チームに見送られ、我らのチームは山小屋を出発した。
太陽の姿は見えず、ヘッドライトのわざとらしい光だけが私たちを照らす。
私たちは背中に獣を飼っていた。
体のほとんどが水道水でできている獣だ。
私たちは常にその獣に肩や腰を締め付けられながら登った。
登り始めて1時間程経った頃、熊撃退スプレーが誤射された。
辛み成分であるカプサイシンが私たちのチームを襲う。
鼻、喉、目が悲鳴を上げる。
私たちは歩く速度を上げる。
カプサイシンゾーンを抜けたあとも痛みはしばらく残った。
熊ですら逃げ出すスプレーを食らっても、背中にいる獣は微動だにしない。
スタートから4時間後、私たちは雁戸山に着いた。
皆一生懸命笑顔を作ろうとしたのだが、これ以上は笑えなかった。
雨が強くなり、地面は土ではなく泥になった。
このあたりから登り坂だけでなく下り坂も出てくる。
足場の悪い下り坂で私たちは背中にいる獣に攻撃を始めた。
背中にいる獣を無意識に地面にたたきつけはじめたのだ。
たたきつけた後、私たちが斜面をすべることで獣を引きずったりもした。
この攻撃を食らった獣は泥まみれになってやがった。
ジェットコースターのように登りや下りを繰り返すことさらに3時間、
私たちは八方平避難小屋に到着した。
雨に持っていかれた体温を温かいスープやホットミルクで取り戻し、なんとか正気を保つことができた。
そのあとも登山は続く。
登っても登っても現れる上り坂と切り立った崖は私に説得してくる。
もう、終わりにしないか?
崖から飛び降りればこの世のすべての苦しみから解放されるぞ。
そしてそんな風に私に訴えかけてきているようだった。
私は分からなくなる。
何故山なんかを上っているのだろうか?
そんなことを考えていると自然に涙があふれてくる。
泣いている姿を仲間見られたくなかった。
この時私は大事なことを思い出した。
そうだ、私には仲間がいるではないか。
この苦しみを共にする仲間が!
仲間がいればどんなことだって耐えられる!
素敵な仲間がいてくれてよかった!
私が山に登る理由、それは仲間がいるから!!!
私以外のチームメイトも全く同じことを思っていたに違いない。
そしてついにその時はやってくる。
スタートから11時間、私たちは目的地である名号峰にたどり着いた。
そこで私たちは背中にいる獣のはらわたを引きずり出して捨てた。
そのあとのことはよく覚えていない。低体温症のせいだろう。
丸子さんがコマクサをみて大興奮していたことくらいしか覚えていない。
そして気づいたら仙台に帰ってきていた。
あー楽しかった~
文責 K

