一日目
無事集合時間の3時には間に合ったのだが眠気が抜けない僕は部室について早々にタウリン1000mgを経口摂取。運転は大地さんにお願いし、来るべき大朝日岳に備える。大朝日岳は”大”の字は伊達ではないのだ・・・。 舗装されてない曲がり道をいくつも越えるとナチュラリストの家が目の前に。相変わらず山小屋っぽさを微塵も感じさせない、緑色が映えるきれいな建物である。
前回はここから大朝日岳を眺めることができ「冗談だろ・・・」と驚愕したものだったが今回は雲がかかってしまい見ることができない。そのせいもあってか班員の顔も晴れやk・・・おや、MSLの小加藤(自称)君が物憂げな目をしているぞ??「俺、山実はそんな好きじゃないだよね、単位もらえないし。」 頭に「偲ぶ昭和 肇まる平成」とほんとどこで売ってんのって感じの手拭いを装着した彼は割合楽しそうに最初の吊り橋をわたっていく。 6時45分 登山開始。
聞かなかったことにしようと心に決めた。
今回の山行はテスト期間ということもあって、参加したのは単位などは気にしない本当の山好きのみ。よって少数精鋭の1チームだ。靴を新しくし靴擦れが不安なやっさんや麓でデジカメバッテリーが怪しかった秦さんらとともに和気あいあいと川沿いを進む。
登山カウンター前を何度も往復し(やっさんが)
マイナスイオン溢れる渡渉を越える。
道中、スマホ掲げて写真を撮る面々がポケモンGOをやっているように見えてしょうがなかった。
8時40分、加藤の童心を試す機会が訪れた。そう川遊びポイントである。天気は快晴、上を見上げれば太陽、正面には川。これは童心をくすぐられ「え、あ~じゃあ休みますか~」。
そんな乗り気じゃなかった。
この川遊びポイント周辺で、三年生は来るべき上り坂に備えて杖という名の棒を装備し始めた。

心配していた天気は、照りつける太陽となって牙を向き、汗はとめどなく流れ出る。木々の緑が目に眩しい。おおかた暑さに参ったのだろう、僕の後ろでは「しりとりしようぜ~やかん」「んごー」と大変知的な遊びをしていた。
残りはあと5km。平地だと1時間かからないのになぁ・・・
9時20分 二股出合。その名の通り二つの川が交わる場所である。ここからが大朝日岳の本番、ひたすらに坂が続く。早朝に摂取したタウリンが効き始めていることを祈るばかりである。
「さかまじつらい」メモ帳に書き綴られたこの一言がすべてを表している。右手に見える小朝日岳。
明日はこれを登るのかと考えると足取りはさらに重くなる。途中で大地さんが間違えて持ってきてしまったCL水2Lを引き受けた。足取りはさらに重くなる。
(足の疲労を癒すべく湿布を貼る大地さん)
10時30分 長名水
11時30分 六合目
12時 七合目
延々と登りが続く。行けども行けども坂道で皆の心がめげかけたそのとき
「え~フライングになっちゃうんですけどここで歩荷出します」
住友最高かよ
しかも取り出したのはひんやりと甘い立派な大福。
なんでも喜久福というお店の大福で、大変人気なそうだ。人気の高さにも頷ける、納得のおいしさだった。ありがとう住友、微笑みの天使。
(これには秦さんも納得だが、疲労でうまく頬が上がらない)
そろそろ樹林帯を抜け、ハイマツ帯に入る。尾根を歩いているとあたりの山々が一望でき、大朝日ひとつで縦走気分だ。心なしか蔵王に似ていたので、後ろを歩く三年生に同意を求めたところ「あ゛?」と返された。蔵王は様々な顔を持ち合わせているらしい。
12時30分、雲に囲まれ、緑鮮やかな眺望はどこへやら、見慣れた景色に逆戻りする。小朝日岳なんてなかったんや・・・!
気づけば時刻は13時半。何個も山頂もどきを登り、ついに山頂に到着!
山頂と僕はアキレスと亀の関係ではなかったのか、と安心した。
ここで加藤と秦さんの目が光る。そう、それは歩荷。加藤のザックからは木の小箱に入ったみずまんじゅう、
(ごめん加藤、なんか水まんじゅうの写真なかった)
秦さんのザックからはキウイフルーツが姿を現した。
「みんなの笑顔のために買ったんだからね」
加藤が言うと綺麗なはず台詞もまっすぐな意味で捉えられないのは僕の心が汚いからなのだろうか。一時間ほど山頂でのんびりとして、疲れた体を癒す。
小屋には三時ごろ着き、天気図係を残しほかのメンバーは小屋から最寄の水場である金玉水へ。
加藤が金玉水と言うときに少しにやけているように感じてしまうのは僕の心が汚いからではないはず。金玉水の水は大変冷たく、おいしかった。帰り際に雪渓の雪を少しいただき、ビール類を冷やす。今から夜が楽しみだ。
今回の山行はやっさんが食事係という珍しいキャスティングであるが、部室でもよく料理を作っているので安心である。
(炎の筋肉料理人 ヤス)
晩御飯のメニューはチャプチェ、きゅうりと梅の和え物と夏らしいメニューだ。
米炊き、料理ともに大成功し、山の上とは思えないおいしい食事がいただけた。毎回山行中のほうがいい食事を食べさせてもらっている気がする。
食事の後は夕焼けを眺めるべく山頂へ。紅く染められる日本海は心洗われる美しさだった。
今回のミニ宴会は一味違う。
なんと管理人さんもウイスキー片手に参戦してくださったのだ。アルコールを摂取すること自体が二回目だというしーちゃんにウイスキーの原液を注ぐ管理人さん、そしてそれを平然と飲むしーちゃん。
途中、一度管理人室に消えたかと思いきやイナゴの佃煮を差し入れしてくれた。
虫が嫌いな僕もおそるおそる口にしてみると・・・おいしい!翌日、写真を見て少し引いてしまったが。やはり酔いというものはすごいなぁ。
時刻はもう8時、山の上のはすっかり夜である。程よく酔いが回った自親会員たちは寝袋にくるまり明日の小朝日岳に備え、静かな眠りにつくのであった。
二日目
あ・・・ありのまま 今 起こったことを話すぜ!
「俺が目を覚ましたら、隣に寝ている加藤がズボンを穿いていなかったんだ」
な・・・何を言っているのか わからねーと思うが
俺も何が起きていたのか わからなかった
(出典:漫画「ジョジョの奇妙な冒険」第三部 ジャン=ピエール・ポルナレフ)
なんか暑かったらしい。下着は穿いてたからよしとしよう。
きっかけはなんであれすっかり目が覚めた僕は、朝焼けを眺めに小屋から出る。
日はまだ顔を出しておらず、空の縁がほんのりと明るい。太陽のオレンジ色が織り成すグラデーションと、透き通った空の青は対照的だが、その境目がどこなのかは釈然としない。
朝焼けや夕暮れ独特の、入り混じった色は山でしか見られないような気がする。
朝食の準備をしていると、いつの間にかご来光していた。真っ赤に包まれながらうどんをすする。
5時半、山小屋を出発。天気もよく、山日和となりそうだ。名水と名高い銀玉水の水は、心なしか甘く、おいしかった。
ペットボトルに汲んだがあまってしまった銀玉水は、部室前の朝顔に。きっと元気に育つことでしょう。
避難小屋を出てから、常に正面には険しい登りの小朝日岳が見える。
頂上に着いたときの達成感はいかほどのものなのだろうか、想像力を膨らませ、現実逃避をしながら歩を進める。坂辛い。
7時20分、ついに小朝日の山頂に着く。
これで今回の山行もほぼ終わったようなものである。ばてなかったことをはしゃいでいると、後藤が「テストも課題も、あるんだよ」と呟いていた。一年生にしてなかなかの闇がある。
一方、しーちゃんは助六寿司をくれた、わーい。
ここからはひたすら下るのみ。道中のガレ場では住友が無言で転び、それに続いて秦さんも転ぶ。彼の銀マットは人に殴られガレ場で擦られ、社会の荒波にもまれて、もはやミンチ状態である。後藤はロープ場で藤岡弘探検隊のような動きをし、やっさんのシャツは汗でホルスタイン種の模様そのもの。山頂でも見れた月山が、さらに近づいて見えた。途中にあった鳥原山の三角点は踏まれず、加藤の歩むペースは徐々に上がっていく。そして鳥居を抜け、鳥原小屋に着く。
小屋での休憩ではもちろんアディショナルタイム制度が導入される。今回の要因はトンボを捕まえるためだ。子供のように目を輝かせた加藤がトンボを追う。それはいいのだが捕まえたトンボを僕に投げつけてくる。前述の通り虫の苦手な僕は(実はカエルも得意ではない)、加藤から逃げ回っていた。CLの秦さんもトンボには目がないらしく、出発の直前までトンボを捕まえようとしていた。
両手がふさがっているからという理由で捕まえたトンボの羽を唇で挟める加藤はすごい。正直ひいた。
金山沢まで、平坦な道が続く。皆もくもくと足を動かす。
金山沢ではもはや恒例「ヤスの髪洗い」が披露された。あれ、あのあとすごい頭かゆくなるんだよね。川辺で涼しいときを過ごし、残すは最後の下り坂のみ!
最後の下り坂は、九十九折が延々と続く長いくだり道だ。何度曲がっても道が現れ、僕らの心は疲弊していく。しまいには「鹿もこの坂を下れるのだ、馬が下れぬ道理はあるまい。ヤス、そなたが馬となり我を乗せよ」と理不尽な源義経ごっこにまで発展した。人間って追い詰まれると怖い。
坂を下りきり、登山カウンターの前を飽きもせず何度も往復し、つり橋を渡った僕らはもうゴーr「最後に小屋まで少し登るんやで」。この登りがわりと辛かった。肉体とかじゃなく心に辛かった。秦さんが叫び声を上げる程度には辛かった。
12時10分、全員無事でナチュラリストの小屋に到着!反省会をし、ここからは「テストあるし早く帰るから高速乗るのも辞さない」班と「まぁ普通に下道でよくない?」班に分かれて車に乗る。リンゴの湯につかり人間性を獲得し、カツでおなかを満たす(最初は肉そば屋を目指していたのだが、看板につられてしまった)。部室に到着したのが高速使った組とさして違いがなかったのは、僕の日ごろの行いの賜物だろう。朝焼け、夕焼けともに綺麗で、天候にも恵まれた今回の山行は大成功で幕を閉じた。
文責:江頭(コブ)






























