五日目の朝がきた。希望の朝だ。今日は下界に戻る日、この3000mの高度にいれるのも今日が最後と思うと外の冷涼な空気もいとおしく思える。 今日の朝御飯のため八田さんが慎重に運んできたクラッカーは少しも欠けることなく、2日調味期限を過ぎてしまったフランスパンは多少の水分は失いつつも柔らかさを失っていない。カマンベールチーズの外面を削ぎとり鍋に火をかければ本日の朝御飯、チーズフォンデュの完成だ。


(なんか後光がすごい)
チーズはパンによくからみ、ベーコンはかりかりに焼かれている。満ち足りた気持ちでこの長期山行の全食事が終了した。ごちそうさまでした。 主発時間が繰り上げり5時10分、秦さんが飛びそうな風のなか出発。岩々しい道を道を進む。 降りかかる雲の粒は冷たく体温を奪っていく。「飛ばすかい?暖まるぜ?」笑顔の真聖さんが振り向き様に言い放った。
外は風強くテントが飛びそうなほどの勢い。しかし今日は最終日だ。「最終日は免罪符」と誰かが言ったとおり、嫌になってしまいそうなこの悪天候も今日でおさらばと考えると何も嫌なことはない。チームが一丸となりテントをたたむ。 
5時55分、吊尾根分岐。嶌田さん以外誰もザックを背負っていないでお馴染み、チームAKITOと遭遇する。少しの休憩をとる。 寒いためあまりゆっくりはしていられない。先頭をみなみんに変え山頂を後にする。 「あんま休憩とかいらないでしょ」といった真聖さんがホットココアを飲みたいがゆえに休憩が延長されたのは秘密である。 肩の小屋にはアメニティが数多く取り揃えてあり、バンダナやバッジをはじめとしてつるはしやコップなどまでも売られている。そんななか暖簾を買ったのはやはり大金さん。暖簾の使い道はご存じなのだろうか。一通り買い物を終え小屋をでるとみなみんがザックを背負い仁王立ちで立ちはだかっていた。「さっさとしろよてめぇら」とでもいいたげな顔だ。察した八田さんが「すいっませんほんとすいっません」とはしゃぎながら謝っていた。

途中で先頭が自分に変わる。下り道が早いと噂のあかりんさんを少しの間トップにしてみたところ本当に速かった。真聖さんが止めるぐらいに速かった。 霧雨が降り濡れる体。でも気にしない今日は最終日!!!沢の水を飲みに行く真聖さん。でも気にしない今日は最終日!!! 雨は刻一刻と強まってゆき自然と歩をすすめるスピードは上がって行く。気付けば地図と違う道を進んでいるではないか。急いで引き返し再び分岐に舞い戻る。 雨に濡れ濃い霧に包まれた神秘的な樹林帯を抜け9時30分、白根尾池小屋につく。 外にでると草滑りを文字どおり滑ってきた吉野さんがスマホで連絡していた。携帯通じるのかよ・・・。 9時50分、出発。道はぬかるみが多い。本日初とも言える雲の晴れ間を見ることができた。 10時10分、今回の山行のメインともいえる場所にたどり着く。そう、吉野転がしである。良い感じの道から突然のな下り坂。まさに吉野さんを体現してるといえよう。 空は青くすみわたっており、広河原の登山口に近づいたからであろうか、たくさんの登山客にすれ違う。道は平坦で歩きやすい。出口はすぐそこだ。時々謎のパネルに遭遇した。



最後には時間に追われ、腕時計をすごく気にしながらの食事となってしまった。 時間が案外余裕なのにも関わらず班員を焦らせ急がせる悪の権化。時間には間に合ったものの具合が悪くなりそうだ。息を荒立たせながらバスに乗り込む。 話に夢中になると後ろを振り向き話してしまう運転手さんの運転で狭い山道を抜けていく。 トンネルを数多く通り抜け、道の傾斜が緩やかになった頃にはバスの車内は静まり返っていた。疲れがたまっていたのだろう、みんなぐっすり眠り込んでいる。



煌めく切れかけのネオン看板に年期のはいった玄関、絨毯のワインレッドは渋味を帯びて、奥では一世代前のゲーム筐体が稼働している。これは浴槽にも期待も高まるというものだ。 「ガラガラ」。取り付けの悪い扉を開けるとそこには不思議な光景が広がっていた。 水風呂はなぜか枯渇しており、浴槽の端には小さな滝のようになっている。シャワーの勢いは弱く、海の家を彷彿させる水量だ。極めつけは厚い扉で区切られた「ラドン室」。 (ここからガスが送られてくるらしい)


中に入り説明を読むと遠赤外線の効果やγ線の説明がつらつらと書かれた後、「注意:はじめてのお客様は気持ちが悪くなることが有ります。」。やってられるか!急いでラドン室を後にする。一通り汗を流しさっぱりとした自親会の御一行はその後ゆったりと下界の楽しんでいた。 今宵は宴だ!心をうきうきさせながら甲府駅に集合する。時間より少し前に着くとそこには一人だいっちょさんの姿があった。どうやら駅でみんなとはぐれてしまったらしい。さすが初代ポンコt・・・。はぐれだっいちょをパーティーに加え宴を待つ。二代目ポンコツを含む二年生の何人かは安定の遅刻をしていた。
やっさんに連れられ宴会場に着く。
今夜は飲むぞ飲むぞ~!!
忘れてた僕ら一年生(八田さん除く)は未成年。 滞ることなく宴は進む。乾杯をして全員の健闘を称えればそこからは無礼講。食べるは飲むわの大騒ぎ、五日間の疲れはどこかへいってしまったようだ。
_人人人人人人_
> 年齢確認 <
‾Y^Y^Y^Y^Y‾
ここで突然大地さんが立ち上がる。ざわつく会場、してやったり顔の大地さん。
「ここで三年生へのプレゼントがあります」
「俺らがなんの理由もなしに遅刻したとでも思ってるんですか」
「聖史が企画してくれた・・・」
「アルバムだぜイェーイ!!!」
「本当にお世話になりました!!!」
実は二年生、三年に気づかれないようひっそりとアルバムを製作していたのだ。中を開くと今回の長期の写真とともに班員からのメッセージが。各チームのSLからアルバムを渡されるCL。これには先輩方の涙腺も緩む。
自分達もこんな関係が築ければと心から思った瞬間であった。

一次会のあとは恒例の二次会。先輩方は夜の甲府の町へと消えていく・・・。
おわり


















